二王子岳から赤津山、飯豊連峰縦走




          二王子岳から赤津山、飯豊連峰縦走コース図

【日 程】2011429日~503日(金~火)
【山 域】磐梯朝日国立公園内、飯豊連峰
【山 名】二王子岳1420.1m、二本木山1424m、雷岳1140m、桝取倉山1193.9m
     ヤンゲン峰1245m、赤津山1408.1m、藤十郎山1331.5m、二ツ峰1642.4m
   門内岳1887m、地神山1849.6m、頼母木山1720m、枯松峰1184m、西俣ノ峰1023.2m
【天 候】29日曇り後雨、30日曇り後雨、51日雨強風霧、2日濃霧強風、3日快晴
【メンバ】伊久間、他1人
【コース】二王子神社から二王子岳、赤津山、門内岳、西俣ノ峰下山、川入登山口
【タイム】29日 二王子神社11:55~一合目12:39
一王子避難小屋13:55
  30日 一王子避難小屋4:551000m付近5:55~二王子岳8:08-8:40~二本木山9:08
     最低鞍部10:00~雷岳10:45~桝取倉山11:47~ヤンゲン峰14:36 テント泊
5
1日 ヤンゲン峰テント場9:50~赤津山下鞍部11:10~赤津山12:38 テント泊
  2日 赤津山テント場5:25-8:00~藤十郎岳9:581310m10:501407m11:50
     1465m12:51~二ツ峰14:52-15:10~二ツ峰下テント場15:35 テント泊
  3日 二ツ峰テント場5:10~門内岳7:05-7:30~地神山8:47~頼母木山9:30-9:50
     枯松峰10:45-11:10~西俣ノ峰11:44-12:05~奥川入荘13:20 入浴、休憩

     奥川入荘14:30~新発田駅15:55着 新発田駅16:10~新潟16:33特いなほ10
     新潟駅17:04~直江津駅18:59着 直江津駅19:59~長野駅21:30
     奥川入荘から下越山岳会の田邊さんに車で新発田駅まで送って頂く。
(文中、「杁イリ」は本当は木八と書く「えぶり」。朳は第二水準で表示しない場合あり)
 2009年の春山に蒜場山、烏帽子山、大日岳と飯豊連峰を縦走して門内岳から眺めた
二王子岳から延びる赤津山への尾根、胎内尾根の先端の二ツ峰の尖峰の展望が素晴らしく
いつかは歩いて見たいと思っていました。今年の春山にこのルートを選んで歩く事にしま
した。二王子岳から赤津山への稜線は標高も低く、残雪が少ないと薮に覆われて歩きにく
くなる事も心配されましたが今年は雪融けが遅くて豊富な残雪があり薮に悩まされる事は
思ったよりありませんでした。しかし、今までの春山は運良くお天気に恵まれていました
が今年は5日の間、4日は雨と濃霧、強風に悩まされる事になりました。残雪が多い分だ
けクレバスも深くて場所によっては尾根の上に垂直の壁を作って立ちはだかっている場面
もあって通過に時間が掛かりました。今回のコースは人にはお勧めできないと思うのでし
た。それでも最終日には快晴に恵まれて素晴らしい展望が得られ、新潟県、山形県の人達
の厚い人情にも触れる事ができ、思い出に残る山行となりました。

新発田駅で降りて駅前からタクシーに乗って二王子神社までお願いすると、運転手さんは
おばさんでその場所は知らないと言いますので地図を見せてあげて説明しました。本社に
場所を確認しながら出発しました。予定ではバスで中田屋まで行きそこから歩く積りでし
たがそのバスは平日運行と言う事で動いていませんでした。そこで二王子神社までタクシ
ーで行ってしまう事にしました。お陰でバス停から1時間30分以上時間短縮できました
。狭い沢沿いの山道に入ると周囲にはまだ雪が残っています。神社手前の橋を渡り駐車場
に停めて貰いました。駐車場には3台程車が停まっていました。
 
  二王子神社から杉林の中を上がる        イワウチワが咲いていました

支度して二王子神社境内に入ると雨が降ってきましたのでキャンプ場の炊事場の屋根の下
で雨具を着けて入山届けを出して登山口から歩き出しました。暫くは杉の植林帯の中を歩
きます。少し上がると登山者が一人下ってきました。挨拶して話をすると、上の方は霧が
ひどくて二王子岳山頂までは行かずに標高1100m付近で引き返してきたとの事でした
。次第に高度を上げるとまた一人下ってきます。やはり霧で何も見えないと言っていまし
た。一合目と書かれた大きな杉の木で休憩して更に上に上がると道は雪で覆われてきて雪
の斜面を上がる様になりました。三人目の登山者が下ってきてやはりひどい霧だ、と言っ
て下って行きました。

 
       雪の残る斜面              一王子小屋

雪の斜面の傾斜が緩くなり平地になると遠くに小屋が見えて来ました。一王子小屋でした
。入り口の屋根が少し落ちていて狭くなっていましたが中に入ると良く手入れされていて
きれいな小屋でした。入り口に小屋利用者記帳ノートが置かれていましたので私達も記帳
しました。「ストウ洋一」さんと言う書き込みが多いので良く注意して見ると、多分、この
方が管理人ではないかと思えるのでした。更に、天井板に「寄贈 須藤組」と書かれてい
ましたので、その思いは確信に近くなりました。小屋本体は軽石ブロックを積み上げて作
られていてその上に屋根が載っている構造になっています。床は木とコンパネで敷かれて
います。部屋の隅に石油ストーブが置かれていて「ストーブは灯油持参で使用して下さい
」と書かれた紙が貼ってありました。
 
      一王子小屋と新発田

小屋でのんびりとお茶を飲んでいるうちに天気は回復してきて太陽も見えてきました。外
に出て見ると杉の木の間から新発田の街も見えていました。同行者の持参したペットボト
ルに入れたウイスキーを分け合って飲みます。500ml程ですので五日間持つ様に少し
ずつ頂きます。夕食を済ませて明日に備えて休みますが、避難小屋はテントより寒く感じ
ます。壁がコンクリートで天井も高く広いので寒さを一層感じます。テントの狭い空間は
すぐに温まって快適な空間となるのでした。


4月30日(土) 晴れ後曇り、雨、風

避難小屋はテントを撤収する手間もありませんので楽です。支度を済ませて小屋の前の斜
面を上がり稜線を登ります。広い雪の斜面を快適に上がります。振り返ると新発田市の街
が良く見えていました。標高1000mを越えて休憩します。この辺りが定高山(独標)
付近と思われますが雪の下で何も標識はありません。途中には幾つかの二王子神社の末社
の祠がある筈ですがそれらも雪の下で見当たりませんでした。北側の尾根には二王子スキ
ー場がありそのゲレンデが見えています。そのゲレンデは斜度も緩やかでその上部もその
まま上がっている様に見えます。その尾根を上がれば二王子岳まで楽に上がれるかも知れ
ません。

 
     定高山付近から五頭山          二王子岳への登り

斜面を上がりきると広い山頂に出ました。何かのアンテナが右手にあり、その下にカマボ
コ型の施設があります。通信設備かと思われます。その近くに二王子神社奥宮跡があり、
二人の登山者が立っていましたので近くに寄って挨拶しました。昨夜は山頂の二王子小屋
に泊まったとの事でした。山頂も風雨が強く、テント泊しようと思っていたがテントでは
無理だったと言っていました。二人は夫婦と思われました。靴は長靴を履いていました。
暫く話をして私達は山頂へ向かいました。二王子小屋も中はきれいに整備されていて快適
な小屋でした。そのすぐ先が二等三角点のある山頂で飯豊連峰側に大きな門が作られてい
ます。青春の鐘と書かれていますがその文字には昨夜の強風でエビの尻尾がびっしりと着
いていて良く判読出来ない状態で鐘は付いていませんでした。門の下には黒御影石で作ら
れた立派な山頂標識がありました。後ろには下越山岳会と書かれていますので一昨年登っ
た蒜場山にあった標識と同じ物でした。平成20年6月設置と言う事も同じでした。

 
   二王子岳山頂(左に小屋が見える)     二王子岳から新発田の街

展望は素晴らしく杁差岳から飯豊連峰が良く見えていました。先ほどのアンテナ付近から
は一昨年歩いた峰々の蒜場山から烏帽子山、大日岳が良く見えていました。杁差岳の手前
には胎内尾根があり私達の目標の門内岳の手前の二ツ峰まで延びています。二ツ峰は黒々
としていて鋭く尖っています。きっと登りは藪に違いありません。二本木山から左に尾根
が深く下っています。そして雷岳、桝取倉山、ヤンゲン峰へと延び、赤津山へと上がって
います。途中には大きな雪庇が見えています。黒く見える薮もあります。簡単には通して
貰えそうにないと思うのでした。暫く展望を楽しんで、二本木山に向かおうとすると鐘を
持った男の人がやってきて門に鐘を取り付けていました。軽く挨拶して私達は先に進みま
した。

 
     二王子岳の広い山頂            二王子避難小屋


             二王子岳山頂から飯豊連峰

二本木山は二王子山より標高が4m高いのですが二王子岳を眺めても高さは感じません。
むしろこちらより高く感じます。標識も出ていました。今年は残雪が多く、殆どの尾根が
雪で覆われていて薮漕が少なく済みそうな予感がしますがどうなるでしょうか。雪に覆わ
れた広い尾根を快適に下ります。最低鞍部を過ぎて雷岳までの急斜面を上がり僅かな薮を
漕いで行きます。標高1200m付近の鞍部も今年は残雪が多く、快適に進みます。桝取
倉山付近で雷の鳴る様な大きな音が辺りに響きますので南側向かいの斜面を見ますと雪崩
が起きて雪が落ちて行きます。気温が高く踏んでいる雪も腐っている状態ですので斜面全
体が溶けて落ちている様です。

 
     二本木山山頂から二王子岳       二本木山から赤津山への稜線

桝取倉山を過ぎると下りの急斜面になります。尾根上も割れた雪が大きく口を開けていて
通過できない場面もあり、急な雪面をトラバースします。大きく下って急斜面を登り返し
ます。次の1150m峰への登りが殆ど垂直な崖になっています。3m程の高さでかろう
じて潅木が生えていますのでそれに掴まって何とか這い上がれそうでした。しかし、登ろ
うとすると下向きに生えている潅木が滑って中々登る事が出来ません。必死の思いで枝を
掴んでやっと這い上がりました。上がった所の正面がまたしても雪がぱっくりと割れて落
ちていて垂直の壁になっていて簡単に登る事が出来ません。尾根も狭くてトラバースも出
来ません。左右どちらも切れ落ちていて落ちれば大変です。ピッケルで壁にステップを幾
つか刻んでようやく上がる事が出来ました。

 
    桝取倉山への登り             藪を避けてトラバース

その頃から雨が降ってきましたので上がって平地になった所で雨具を着けて休憩していま
した。後ろを見ると単独の登山者がこちらに向かって来るのが見えて来ました。まさか、
このコースで人に会うとは思ってもいませんでしたので驚きました。自分達はこのコース
を歩いているのに驚くとは可笑しい事ですが、こんなコースを歩くのは殆ど変人だろうと
自分達の事を言っていましたので他にもこのコースをやってくる登山者がいたのには驚き
ました。私達はこの難所は通れないのでもう撤退は出きないと話していました。

次第に雨が強くなり、風も出てきます。次のヤンゲン峰に上がり、良いテント場を探しま
す。山頂手前に良さそうな平地がありました。風も除けられて広い場所でした。もう少し
先を偵察しましたが手前の場所が一番良さそうでしたので山頂から少し戻ってそこにテン
トを張る事にしました。雪面を慣らしてテントを張っていると先程の単独の登山者がやっ
て来ました。まだ20代後半と思える彼と話をすると、今日は赤津山まで行きたい、明日
は門内岳を越えて下りたいと言っていました。私達はこのコースに四泊五日を予定してい
ましたので驚きましたが、若さに任せて甘く考えている様に見えました。私達のトレース
が有ったので楽に進む事が出来ましたとお礼を言われました。挨拶して彼は先に登って行
きました。テントを張り終えて中で一休みです。雪を溶かしてお湯を沸かしてウイスキー
を分け合って今日の無事を祝います。

 
  大日岳手前がヤンゲン峰 赤津山        ヤンゲン峰テント場


          ヤンゲン峰から飯豊連峰     大日岳      赤津山

夕食を済ませても雨は強く降り続いています。このまま明日も強い雨だったら停滞しよう
かと相談しながら休む事にしました。何とか明日は良いお天気になればと祈ります。

    
  ヤンゲン峰へ登る途中の藪             崖を上がる


5月1日(日)雨、強風、霧

夜通しテントは雨に叩かれていました。強い風に揺られる事もありました。起きる時間に
なっても止む気配はありませんので少し寝坊をしていました。6時頃に起きて朝食を済ま
せ今日は停滞、と決め込んでのんびりとしていました。7時を過ぎる頃、外で声がしまし
たので開けると昨日の単独登山者が下ってきました。上は霧と雨で何も見えないのでもう
撤退する事にした、と言っています。日程に余裕が無いので停滞は出来ないと言っていま
す。挨拶して彼は下って行きました。私達はそれでも何とか天気が回復すれば前進したい
と願いながら待っていますと、9時頃になると雨は止んで遠くまで見える様になりました
。ここで前進する事にしました。テントを撤収して登ります。再びヤンゲン峰に上がると
目の前に赤津山が見えていました。

 
      赤津山直下から             赤津山山頂三角点

下って行った単独者の足跡を辿って登ります。藪も無く広い尾根を下って上がります。最
低鞍部を過ぎて足跡も無くなりましたが、どこにテントを張ったのか判りませんでした。
赤津山への登りは急登です。薮はありませんが胸を突く急登を上がります。やっと上がる
と赤津山山頂に出ました。山頂には三角点が頭を出していました。傍に折れたピッケルに
山名が書かれていたと思われる板が付けられて置いてあります。もう一枚の鉄板に僅かに
残るペンキの赤津山と言う文字が残っていました。赤津山は双耳峰になっている様で西に
もう一つのピークがあり、そこに大きなアンテナが立っています。まだ早い時間ですが相
変わらず強い風と雨が降っています。先に進む事を止めてテントを張る事にしました。風
を避けられる場所を探しましたが山頂ではどこでも吹きさらしです。そこでもう一つの峰
の直下の吹き溜まりの斜面を掘って風を除けてテントを張る事にしました。 

 
    斜面を掘ってテント場作り          テント場完成

雪洞を掘る程斜面を掘り、その掘り出したブロックを手前に積み上げて風除けにします。
1時間20分程かけてテント場が完成しました。テントが完成する頃に雨も止んで風も弱
くなりましたが、ヤンゲン峰で停滞する積もりでしたのでここまで前進出来た事で良しと
しました。アンテナのピークまで登ると二王子岳から歩いてきた稜線が良く見えていまし
た。杁差岳から門内岳、北股岳、飯豊本山から大日岳まで良く見えていました。烏帽子山
や蒜場山は大日岳の西側に見えていました。


    大日岳  烏帽子山    蒜場山 (赤津山からの展望) 西ノ峰  二王子岳


   二王子岳からの稜線   ヤンゲン峰    背後は飯豊連峰    大日岳

また雨が降り出して風も強くなってきます。テントに入って今日ものんびりとしていまし
た。テントから外を見ると積み上げた雪のブロックが雨と風で溶けて大きく穴が開いてい
る場所が何箇所かありましたが仕方ありません。ブロックを積む時から殆どシャーベット
をすくう様な状態でしたので溶けるのも時間の問題と思っていました。それでも深く雪の
斜面を掘っていますので風にテントを飛ばされる事もありません。いつもの少ないウイス
キーを分け合って今日の無事を祝います。夕食も済ませてラジオを聞いて天気予報を確認
します。下越地方は強風、一日中曇りと言っています。心配になりますがお天気の事です
のでどうにもなりません。一晩中テントを叩く雨と強い風に揺られていました。


5月2日(月)強風、濃霧、雨

今日は何とか門内岳まで行こうと張り切っていましたが、朝から雨と濃霧と強風でした。
雨と風の中でテントを撤収して歩き出します。赤津山山頂に登り返して東側斜面に下ると
そこで前が全く見えませんので斜面を少し下った所で停まってしまいました。少し待てば
天気は回復するかも知れないと待ちました。この先の尾根は広くて方向を誤れば確実に遭
難しますのでここは慎重に行動します。地形図とコンパスを出してこの方向だろうと思い
ますが、ここは慎重に天気の回復を待ちました。2時間も待ちましたが一向に回復する様
子もありませんのでラジオを聞くと一日中曇りと言っています。平地での曇りですので山
では強風、濃霧です。このままでは仕方ないので地形図とコンパスを慎重に合わせて進む
事にしました。

歩き出しても10m先も見えない状態ですので不安で一杯ですが何とか進みます。目の前
まで来てようやく次の尾根が見えて安心します。尾根の上に上がると広い平地になってし
まい、地形では方向がわかりません。何度も地形図を出してコンパスを合わせます。何度
か方向を誤り戻る場面もありましたが間違いなく正しい方向に進む事が出来ました。尾根
も狭くなりその上を進めば良い場面になると一安心ですが、ピークで分岐する場面では慎
重に判断します。高度計で分岐する峰を確認してコンパスで方向を定めます。藤十郎山ま
で来ると時々ガスが切れて一瞬次の峰が見える場面もありました。1331mの山頂から
尾根は東南方向と東北方向に派生していますが正しい進路は東北への尾根に進まなくては
ならず、その方向に高いピークがありました。そのピークが黒く見えたのでした。

薮を幾つか越えましたがいよいよ二ツ峰の登りに掛かると急斜面の登りと深い薮になりま
した。良く見ると人の踏み跡もあります。コースに間違い無い事を確認して安心します。
二ツ峰の薮は上の方に来ると枝にびっしりとエビの尻尾が付いています。昨夜の強風と霧
で付いた物でしょう。しかし、これがびっしょりと濡れた手袋で掴むと冷たくて手の感覚
が無くなる程です。厳冬期なら分厚い手袋と乾いた雪で却って暖かいのですが春山ではそ
こまで持ってきませんので凍傷になるかと思うほどの冷たさを我慢して薮を進みました。
時々岩場を通ります。右側に付いた雪庇の上を歩きますが先で切れていてまた薮の中に入
ります。そのまま雪庇を進みたくなりますが雪庇の先は急斜面で尾根には上がれそうにあ
りませんので薮の中を進みます。

 
     二ツ峰への登りの藪           二ツ峰山頂へ到着

二ツ峰に上がると頂上は三角点が出ていました。丈の低い笹も生えています。高度感もあ
りそうな山頂の筈ですが濃霧で何も見えないので高度感は感じません。少し尾根の先を見
るとやはりそこから切れ落ちていて崖になっています。ようやく二ツ峰まで来られて一安
心して休憩しました。今日中に門内岳まで登って門内小屋に泊まろうと思っていましたが
それは出来そうにありません。ここを下った所でテント泊になりそうでした。下りは崖に
なっていますが良く見ると道になっています。古い鎖と太い針金が付けられていました。
岩も安定していて足掛かり、手掛かりもしっかりしています。慎重に下ると難なく下まで
下る事が出来ました。事前の予想ではここが一番の難所になるかと考えていましたが思っ
た程の難所ではありませんでした。胎内尾根の突端に二つの峰があり、その二つを称して
二ツ峰と言い、下の峰を一の峰、上の峰を二の峰と言います。ですので私達が登った峰は
二の峰でもあります。

 
    二ツ峰下にテントを張る       翌朝の二ツ峰と撤収したテント場の跡

二ツ峰を下ってその先が雪のナイフリッジになっていてそこの方が岩場より怖い場所でし
たが慎重にトラバースします。そこを通過して先に行くと広い平地に出ました。風が強い
ので風の弱い場所を探してテントを張る事にしました。その広い場所は藤七の池かと思わ
れました。広くて風通しが良くここに張ればテントも転がってゆくだろうと思われる場所
ですので少し高い所の尾根の陰の雪面を整地してそこにテントを張りました。赤津山山頂
で霧に巻かれて2時間待機したのですが、そのまま待機せずに進んでもっと早く二ツ峰を
越える事が出来ても疲れてしまってやはり、ここでテントを張ったに違いないと思いまし
た。次第に天候も回復していますがまだ風が強く吹いています。狭い場所でしたので雪を
削りそれを低い所に埋めて慣らしてテントを張る事が出来ました。

赤津山での完全なホワイトアウトから地形図とコンパスに頼って何とか二ツ峰まで辿り着
く事が出来て緊張も解けてテントの中に入り最後のウイスキーで乾杯しました。明日は門
内岳まで上がって頼母木山から西俣ノ峰を経て長者原の川入へと下ります。当初の予定で
は杁差岳に登り杁差小屋に一泊して大石ダムに下山する予定でしたが天候不順の為にヤン
ゲン峰で停滞してしまったのでした。何とか遭難の危機から脱出できそうで安心して夕食
を済ませてゆっくりしていました。夜になって外に出て見るとすっかり霧は晴れて風も治
まり空には星が輝いていました。南の方角の麓には新発田市内と思われる街の灯りが見え
ていました。ラジオで聞いた天気予報では新発田市内で最低気温が7度との事でしたので
標高1600m付近のテント場付近では氷点下になりそうでした。靴もテント内に入れて
水も凍らない様に手配しました。今までの雨続きの中で何もかもずぶ濡れになっています
。シュラフもすっかり濡れていて気持ちよくありません。靴も雨とシャーベットになった
雪の中を歩いてすっかり中まで濡れています。山での事ですので仕方ない事です。


5月3日(火)快晴

朝になるとやはり色々な物が凍っていましたがそれ程の事もありません。テントの外に出
て見ると気持ち良く晴れていて昨日までは見る事が出来なかった周囲の展望が広がってい
ました。まだ日の出前で薄暗いのですが今日は快晴になる事は間違いありません。今まで
歩いてきた赤津山からの稜線も二ツ峰の陰から見えていました。門内岳方向が東で太陽が
上がって来る方向です。テント場から西側に大日岳が真っ白に見えています。きっとここ
に朝日が当たってきれいに輝くだろうと思うのでした。


   大日岳       烏帽子山      蒜場山      赤津山
      二ツ峰下のテント場からの展望  昨日は何も見えなかった稜線

朝食はいつものインスタントラーメンで済ませてテントを撤収します。テントポールが凍
っていて折れませんのでガスコンロで暖めて折ります。バリバリに凍ったテントとフライ
を何とか畳みます。まだ朝日は出ていませんが北股岳方面が東の方向で明るくなっていま
す。雪は凍っていますのでアイゼンを着けて歩き出しました。やっと目で稜線を選んで歩
く事が出来ました。堅く凍った雪の斜面をアイゼンで快適に歩きます。次第に高度を上げ
ると大日岳に朝日が当たって輝いています。門内岳との最低鞍部を過ぎるといよいよ登り
になります。急斜面もアイゼンを利かせて登ります。朝日がようやく谷間全体に行き渡る
といよいよ門内岳も近づきました。北股岳からの従走路が目の前に見えると山頂の鳥居と
祠が見えて来ました。
 
    二ツ峰から門内岳への登り         クレバスの淵を登る

 
   二の峰、一の峰の背後に二王子岳       ナイフリッジを上がる

 
    門内岳から二王子岳方面    門内岳から飯豊本山 梅花皮岳 北股岳

山頂からは二ツ峰や赤津山、二王子岳がきれいに見えていました。その先に蒜場山、烏帽
子山、大日岳への稜線がまだ真っ白く見えています。北股岳から北側にはかすかに大朝日
連峰も見えていました。西側には地神山、杁差岳が見えています。二ツ峰から続く胎内尾
根も幾つかのコブを連ねて胎内ダムまで下っています。一昨年に続きこの景色を見る事が
できました。山頂の祠や山頂標識にはエビの尻尾が一面に着いています。ようやくここま
で来る事が出来て一安心して暫くのんびりと休憩していました。周囲には誰の足跡も無く
私達だけの足跡があるだけでした。この時期なら大勢の登山者が来ているだろうと思って
いたのですがその姿を見る事は出来ませんでした。山頂からすぐ下にある門内小屋へ行く
と入り口のガラスは破れていて入り口の中は雪で埋まっています。入り口から中に入る事
は出来そうにありませんでした。二階への梯子がすぐ傍にありましたので二階から出入り
するのでしょう。

 
      門内岳にて              地神山から地神北峰へ下る

門内岳から稜線北側に広く張り出した雪庇を歩いて緩やかなピークを登るとそこが胎内山
です。石の山頂標識がありました。また少し下り緩やかに登ると梶川尾根への分岐になっ
ている扇の地紙のピークです。右手に下ると天狗平の飯豊山荘に下ります。そのピークを
越えてからかなりの急登を喘いで登ると地神山に着きました。目の前に大きく杁差岳が見
えてきます。左手には歩いてきた二王子岳から赤津山、二ツ峰への稜線が緩やかに見えて
いますが決して楽な稜線ではありませんでした。二ツ峰かららくだのコブの様に幾つかの
峰を抱えた胎内尾根が下っています。今では歩く人も少なくなってしまったとの事ですが
薮好きな登山者に好まれて歩かれている様です。

 
     頼母木山から杁差岳         頼母木山から西俣ノ峰へ下る

地神北峰は丸森尾根へ下る道との分岐になっています。頼母木山へは左の尾根を行きます
。少し急坂を下って次の頼母木山へは緩やかな登りです。夏道も所々現れていますが今は
右側に張り出している雪庇の上を歩いて登ります。山頂手前から夏道を上がると頂上に付
きました。山頂標識にはエビの尻尾が張り付いています。ここから西俣ノ峰へ続く尾根を
下ります。冬や春山では丸森尾根や梶川尾根へ取りつくための玉川沿いの林道は雪崩の危
険があり通ることが出来ないので西俣ノ峰から上がる登山者が殆どです。私達もこの尾根
を下る事にしていました。一昨年もこの尾根を下っていますのでコースは解っています。
ここからはアイゼンも不要になってきましたので外す事にしました。夏道を歩いて泥まみ
れですので雪の中を歩いてきれいにします。

頼母木山から下って笹薮に入ります。小さな峰を越えて藪の中の道を下ると下から女性の
登山者が上がって来ました。軽く挨拶して登って行ってしまいました。飯豊連峰で初めて
出会ったまともなルートを歩く登山者でした。きっとこの西俣ノ峰コースを下れば登山者
に出会うだろうと思っていましたが早速出会いました。また進むと熟年の登山者が上がっ
て来ました。話をすると今日は頼母木小屋まで行くと言っていました。その後も次々と登
山者が上がって来ました。8人程のパーティーもいました。枯松峰に着くと休憩していた
8人程のパーティーが出発する所でした。話をすると、下越山岳会の皆さんで今日は杁差
岳往復して頼母木小屋に泊ると言っていました。私達は二王子岳から縦走してきたと話す
と少し、後方にいる人を指して、あの人はここまでで新発田に帰るので挨拶すると乗せて
貰えるよ、と言われました。彼らを見送って山頂にいた方に挨拶すると、話は聞こえてい
たから一緒に下りましょう、と言われました。自己紹介して暫く休憩して話をしていまし
た。

 
    西俣ノ峰より頼母木山         西俣ノ峰より倉手山、玉川

今まで下って来た尾根を見上げると先程の皆さんが隊列を組んで登って行くのが見えてい
ました。くっきりと澄んだ青空と輝く太陽の下、眩しい白銀の尾根をゆっくりと上がって
行きました。北側を見ると朝日連峰が白さをまして来て良く見える様になっていました。
昨年登った化穴山も以東岳の西側にはっきりと確認出来ました。西俣ノ峰まで下りそこで
また休憩して最後の景色を眺めると長者原から天狗平への玉川右岸を通る林道は崖から落
ちた雪で埋まっています。そこをトラバースして通過するには大変危険な状態でした。気
温が上がればまた雪崩の危険もありますのでとてもここを通る気になれません。そこでこ
この西俣ノ峰を通って頼母木山へ上がるのが今の季節のメインルートになっています。

一昨年はかなり雪が消えていて下ってすぐに土の道になっていましたが今年はしっかりと
雪が残っていて快適に高度を下げて行きました。下から何組かの登山者が上がって来まし
た。皆さん、今日は頼母木小屋までと言っています。今日はその小屋は相当混む事でしょ
う。ブナの木もまだまだ芽を吹いていません。かなり高度を下げると雪も消えて来てイワ
ウチワやカタクリの花が登山道脇に咲いていました。二王子神社から上がってすぐの所に
僅かに咲いていましたがようやく春の花を見る事が出来ました。途中の尾根の藪の中にも
花らしい花はありませんでした。いつもならマンサクの花位は黄色く沢山咲いていました
が今年は遅れていました。

ようやく川入に下る事が出来ました。杉林の道は一面の雪に覆われていますので適当な所
を通って行きます。一昨年は左側斜面が一面のカタクリの大群落でしたが今年はまだ咲い
ていませんでした。枯松峰で一緒になった下越山岳会の田邊さんが親しくしている民宿が
あってそこに車を置いてあり、そこで温泉に入ろうと言う事になりました。喜んでご一緒
させて頂きました。川入の一番奥で、下山して一番最初にある民宿で一軒しかありません
のですぐにわかります。庭に望遠鏡を置いて眺めている人がいました。飯豊連峰に登って
行く登山者を見ていると言っていました。今、私達が下って来た尾根を見上げています。

 
        イワウチワ          下るとブナの木も芽吹き始める

民宿、奥川入さんのお風呂に入り、民宿に上がるとまず割り箸に巻いた手作りの水飴を頂
きました。もち米だけを使って作った自慢の水飴です。そのお茶の間には地元の中学校の
英語の補助講師の女性とその知り合いのイギリス人家族のご夫婦と息子さんの三人が一緒
に話をしていました。民宿の奥さんとALTの講師が知り合いらしく、英語で話しをして
いました。私達もお茶を頂いてくるみ餅を頂きカブの漬物を頂きました。私達はビールで
乾杯しました。二王子岳から四日間雨とガスで悩まされましたが最後の一日は快晴に恵ま
れ、民宿奥川入の皆さんに暖かくもてなして頂きました。これも下越山岳会の田邊さんの
お陰でした。この後、田邊さんには新発田駅まで送って頂きました。田邊さんに送って頂
け無ければ私達はバスで小国まで出て米坂線で村上に出て新潟まで行くつもりでした。そ
れが新発田駅まで送って頂いて大変助かりました。民宿奥川入も料理も美味しく、次回は
ここに宿泊したいと思うのでした。料理もクマ汁や岩魚、山菜、きのこなど豊富な山の料
理を楽しむ事ができます。ここの主人がマタギでお茶の間には大きなクマの毛皮が飾って
ありました。飯豊連峰にお出かけの際にはご利用下さい。

民宿 奥川入  横山隆蔵
山形県西置賜郡小国町大字小玉川576、〒999-1522、電話番号0238-64-2263
http://www11.ocn.ne.jp~kawairi/
  okukawairi0626@seagreen.ocn.ne.jp 

飯豊連峰の一端の二王子岳から赤津山、二ツ峰を通って門内岳へ上がるコースを楽しむ事
が出来ました。赤津山から先の景色は見る事が出来ませんでしたが思い出に残る山行にな
りました。

ALT:外国語指導助手(Assistant Language Teacher)