上信国境の大蛇倉山(だいじゃくらやま)


【日 程】2009年 11月 29日(日) 
【山 域】南佐久郡南相木村
【山 名】大蛇倉山(1962m)
【天 候】晴
【メンバ】伊久間、他6名
【コース】南相木ダムから
【タイム】南相木ダム天空の石広場7:57〜北の窪広場8:18〜林道終点8:31〜舟留分岐9:04〜岩峰下9:40〜
     大蛇倉山10:17-11:20〜舟留分岐12:00〜林道終点12:22〜
南相木ダム天空の石広場13:13


南相木ダムから大蛇倉山

御座山の登った後、立岩荘、立岩湖交流センターと言う施設に泊まりました。
朝食を済ませて南相木ダムへ向かいます。空は曇っていて稜線の上はガスが掛かっています。
ダムに向かう道は二つに分かれていて、下のウズマク広場とダム堰堤の上の天空の石
広場へ行く道に分かれます。
私達は天空の石広場のある上に行きます。136mの高さのある
ダム本体の高低差を道は遠回りして上がります。
左に御巣鷹トンネルと書かれたトンネル
入り口がありますが、一般者は利用出来ません。
東京電力の群馬県側の上野ダムとこの南
相木ダムとの連絡道路になっています。
右手のガスの中にロックフィルダムの堰堤が見え
て来ると天空の石広場になりました。

この辺りは交通不便な地域として入るのも困難だった山域でしたが、東京電力の南相木ダムが出来てからその奥三川湖まで車で入ることができる様になり便利になりました。

高さ136mの中央土質遮水壁型ロックフィルダムで東京電力の神流川(かんながわ)発電所の上部ダムとして1995年(平成7年)より建設開始し2005年(平成17年)に完成しました。ダム湖は奥三川湖と名付けられました。
ダムの堤頂部は日本のダムの中でも一番標高の高
い1,532mの位置に達しています。
神流川発電所は南相木ダム湖(奥三川湖)を上池、上野
ダム湖(奥神流湖)を下池として利用する揚水発電所で、現在1号機(470,000kW)が稼動していますが、最終的には6台の水車発電機により揚水発電所としては世界最大となる2,820,000kWの発電を行う予定だと、広場の案内板に書かれていました。

揚水式発電所は電気の缶詰とも言われていて、余った夜間電力で下池から水を上池に押し揚げ、電力需要の集中時に水を落として発電します。余った夜間電力は殆ど原子力発電所からの電力です。
火力は燃料を絞って節約し、原子力発電は安定運転の為に急な変動は避
けていますので余剰電力が発生するのでそれを利用するのでしょう。

南相木川は南相木ダムに流入せず、脇から導水路を経由して下流に放流されています。
(増水時には増水分はダム湖に流れ込む仕組みになっている)
これは、慣行水利権・漁
業権の関係から南相木川の水を発電に利用することができないためです。
異なる水系の河川水が混入することで下流の漁業資源・生態系に悪影響が生じることへの配慮で、湖水はすべて神流川(かんながわ)の水を揚水したものとのことでした。
ダム湖の周囲は周遊道路が作られていて歩いて一周する事ができます。
立岩荘の少し上に
ある温泉「滝見の湯」では、東京電力の特別の許可により「滝見の湯」において宴会を利用する団体に限ってバスで周回道路を案内してくれるとの事でした。

南相木ダムが建設された南相木村では、これに伴う固定資産税の収入により財政が回復。
2006年度からは地方交付税交付金の不交付団体に指定されたそうです。山奥の寒村ではありがたいダムでしょう。


石灰岩に掘られた歌碑

   大理石のオブジェ、山の蝶

天空の石広場はこの辺りで採れる石灰岩の大きな岩があちこちに置かれていました。
ダム
本体も白い石灰岩で積み上げられていました。
石には和歌が彫られていて、作者は「ふみ
子」と書かれていましたが、誰でしょうか。
広場には管理棟とトイレが作られていました。



北の窪広場

   倒木の多い道無き道を行く

支度して出発します。ダム湖に沿って右岸を歩き、すぐに大蛇倉トンネルを潜ります。
電所の取水ゲートを過ぎてしばらくすると左手の崖の上から鹿の鳴き声が聞こえて来て、数頭の鹿が山奥に走って行きました。その先に北の窪広場があります。広場は石と池で作られています。
池の間に橋が掛けられていて散歩できる様になっています。池はきれいな
水でした。
そこに流れ込む沢に沿って林道を上がります。
左手の笹薮がガサガサ言ってい
ますので見ると鹿が動いているのが見えました。
こちらに気が着くと慌てて走り出しまし
た。するとあちこちから鹿が動き出して笹薮は走り回る鹿で騒然となっていました。この辺りも鹿が沢山住んでいるのでしょう。
林道終点で休憩します。そこには標高1600mと書
かれた案内板がありました。

ここからは沢の中を歩きます。踏み跡がしっかりしていますが、良く見ないと見失いそうな踏み跡です。
所々にピンクのテープが付けられていますので結構登山者が入っているの
でしょう。
何度か沢を渡り、沢が二股になっている所に出ます。
ここは予定の二股より一
つ手前の二股ですのでそのまま左の沢を上がります。


予定地点手前の二股の沢を左へ行く

舟留との分岐の二股から右手に進みます。かすかな踏み跡を頼りに上がります。
この付近
からはテープはありません。
鹿の足跡か、人の足跡かは良く分からない踏み跡ですが沢に
沿って上がります。次第に稜線が近付くと踏み跡は右手の斜面に上がっています。
予定の
コースはそのまま真っ直ぐ上がるのですが濃い踏み跡の右手の斜面を上がりました。
石楠
花の枝を分けて上がると稜線に出ました。辺りの樹林には霧氷が着いています。
まだ周囲
はガスが残っていますが上空は青空になっています。左手の稜線には尖った大岩が見えています。
右手は明らかに下っていますので予定の場所では無い事が分かりました。
地形図
を見ると主稜線では無く、南西に派生した尾根の上です。
山頂はすぐ上と思われましたが
この岩場を通過できるかが問題でした。


二股を右手に進む

   山頂の南西尾根に上がる

ここで休憩して周囲を見ると晴れてきたガスの向こうに八ヶ岳が見えています。
霧氷の樹
林の枝の間から見えていて皆さん、感激して眺めていました。
右手には御座山の丸く見え
る山頂も見えています。

岩の下に行って見て登ろうとしましたが無理です。
左手に巻く事にして栂の林の中を巻い
て予定の主稜線の鞍部を目指しました。
後で、岩場の右手から頂上へ上がる道がある事が
判ったのでした。
こちらの方が高岩方面から山頂に上がるより楽な道でした。その為に多
くの踏み後があったと思われるのでした。
山頂北側からの斜面を石楠花の藪の中を上がり
ます。
斜面と言っても殆ど垂直な崖で、木が生えていなければとても登る事は出来ないで
しょう。
石楠花の枝を掴んで上がります。所々に黄色いテープが巻かれていますので誰か
がここから上がったのでしょう。


山頂直下の岩峰の下に出た


  樹林の間から八ヶ岳が見える


霧氷が着いた斜面

  石楠花の藪を上がると大蛇倉山山頂

石楠花の枝を分けて頂上に着きました。頂上は平坦で広くて快適な山頂でした。
藪を出て
すぐの木に大蛇倉山と手書きの山頂標識がありました。
そのすぐ傍にももう一つの別の標
識がありました。
その標識の木の傍に四角の標石が埋められていましたが、三角点ではあ
りませんでした。
赤くペンキが塗られていました。山頂の西側に岩場がありその上からの
展望は素晴らしいものでした。
右手はガスで良く見えませんでしたが、御座山から八ヶ岳
、川上郷の天狗山、男山がその手前に見え、すぐ近くに出発点の南相木ダムが見えていました。
左には金峰山から国師岳、甲武信岳へと続いていました。
東側はガスで覆われてい
て日航機墜落現場は見えませんが、日航の頭のピークが頭を見せています。
その先の稜線
の高まりは蟻ヶ峰でした。両神山も霧の中で見えません。
日航機墜落の際には無名峰のこ
の大蛇倉山と言う名前は誰にも知られずに付近の御巣鷹山が地形図に記載されている為に御巣鷹山の尾根に墜落した、と報道されてそのまま御巣鷹の尾根、と言う事になってしまいましたが、御巣鷹山の尾根はここより北側で、その東の尾根も大蛇尾根と名付られています。
三角点があって名前が地形図に記載されていた為に御巣鷹山の名前が有名になって
しまいました。
その墜落現場の慰霊の昇魂の碑から上がるコースがこの大蛇倉山に登る一
番簡単なコースになっています。


日航の頭、木の向こうに甲武信岳

      大蛇倉山山頂

山頂で一時間程すごしました。その間に次第にガスは晴れてきて日航の頭から下の稜線も見えて来ました。
遠く、雲取山も見えました。その手前に和名倉山も見えます。
時間
が過ぎましたので、静かな山頂に名残を残して下る事にします。
岩場から見た南西尾根
はすぐ下に先程の岩場があり、南側から巻き道があるに違いないと思いましたので、下りは北側の石楠花の崖を下るのは止めて南西尾根の岩場を巻く事にしました。

斜度は急ですが、石楠花は生えていなくて藪もありません。危険な岩場も無く快適な下りでした。
大きな岩を右手に見て下り、その岩の前に出る事が出来ました。そこは登りにそ
こまで来た場所でした。
良く見て右に岩場を巻けば良かったのですが、左に岩場を進んだ
のでした。
当初から予定していた北側からのルートも見てみたいと言う気持ちもありまし
たのでそれ程の事はありません。
いずれも想定の範囲の事でした。



大蛇倉山山頂西側の岩場から南相木ダム、御座山


大蛇倉山山頂西側の岩場から金峰山、小川山、八ヶ岳、天狗山、南相木ダム


下りは快適に下る

    上野ダムとの取水ゲート

下りは快適に下ります。落ち葉でふかふかの地面を歩きます。
谷間で苔に覆われている斜
面でまばらに生える木々の間を下ります。舟留分岐に出て沢を下ります。
朝は凍っていた
地面が溶けていてぬかるんでいました。それを避けて歩きます。沢を倒木を橋にして渡ります。
林道終点に出る事が出来ました。ここまで来ると一安心でした。あとはダム湖の周
回道路を歩くだけです。
朝はガスで見えなかった景色が晴れて見えています。奥三川湖の奥には蟻ヶ峰まで見えています。
ダム湖の展望台からは先程登った大蛇倉山の岩場のある山頂が見えていました。

南相木ダムの提頂を歩きその大きさを実感しました。
そこから大蛇倉山を眺めて静かだっ
た山頂を思い出すのでした。


南相木ダム堰堤上から大蛇倉山    上が山頂の岩場、下が南西尾根の岩場


ガスで見えなかった大蛇倉山山頂から甲武信岳方面のカシミール画像